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米トゥラリップ 保護区の豪華カジノ

2022年10月19日

 緑に囲まれた海岸沿いに車を走らせると、視界に突如として豪華なホテルがあらわれた。米先住民保護区の取材で訪れた北西部ワシントン州トゥラリップ。一定の自治権を持つ先住民が運営する、いわゆる「インディアン・カジノ」だ。ホテルでは宿泊客らが合法的にカードゲームなどの賭け事を楽しめる。

 ホテル内の飲食店で待ち合わせたテレサ・シェルダンさん(41)は、この地で暮らすトゥラリップ族。先住民全体の権利擁護に取り組んでおり、問題意識は深く幅広い。「世界で初めて生物兵器が使われたのは、開拓時代に白人が天然痘ウイルスのついた毛布をわざと先住民に渡した時だ」「反黒人差別運動とも、もっと連携していきたい」

 インディアン・カジノも、産業が乏しい保護区の中で雇用の柱となる一方、「収益の扱いや課税を巡って連邦政府との摩擦もある」とシェルダンさん。賭博産業そのものが先住民の伝統と相いれず、ギャンブル依存を生むといった懸念も根強い。

 話を終えて飲食店を出ると、カジノフロアへの派手なサインや青く水が張られた室内プールが見えた。その華麗さが、どこか胸に重かった。 (杉藤貴浩)