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ニューヨーク 21年、それぞれの歩み

2023年01月04日

 流れた時間に思いをはせた1日だった。米中枢同時テロから21年となった11日のニューヨーク。ハイジャック機が突っ込んだ世界貿易センタービルの跡地で、追悼に訪れた遺族らの話を聞いた。

 エルナ・タマヨプラドさん(82)は、弟ヘクトルさん=当時(51)=を亡くした。この21年の間、当時は高校生だったヘクトルさんの娘は無事に成人。「その後の結婚式では弟の写真を持ってバージンロードを歩いてくれた」と少し笑顔を見せた。

 「親友みたいだった」という兄=当時(31)=を亡くしたアンスーラ・カチマティデスさん(50)。長く失意の歳月が続いたが、つい2週間前に婚約した。「兄は憎しみとは縁遠い人だった。この年になっての婚約は、彼からの贈り物だと思う」

 遺族や子孫が犠牲者の名前を読み上げる追悼式典では、子どもたちの登壇も目立ち、世代の移り変わりを印象づけた。だが、この間、どれほど多くの人々が理不尽な喪失感と闘ってきたのだろう。「それでも悲しみは癒えない」という彼らの言葉を胸に刻みつつ、その道のりで見つけた幸せをともに喜びたいと思った。

 (杉藤貴浩)