2023年01月23日
高層ビル群の谷間の水辺でサギが小魚をついばみ、若者らがカップコーヒーを飲みながらおしゃべりに興じる。ソウル市中心部を流れる清渓川(チョンゲチョン)は今やすっかり市民の憩いの場となったが、20年ほど前までは上部を高架道路が走り、コンクリートでふたがされ、異臭を放つドブ川だった。
2002年にソウル市長となった李明博(イミョンバク)氏が、老朽化した高架道路の撤去事業を進め、05年に清流を再生。実行力を評価され、後に大統領に上り詰めたことで知られる。
高架道路の痕跡は消し去られたと思っていたが、先日、数キロ下流までサイクリングをして、高架の橋脚が3基、川の中に残された場所を見つけた。近くには、韓国が日本の植民地支配を経て、世界最貧国と呼ばれた時代まで、堤防沿いに並んでいたという「水上住宅」も保存されていた。
地元では、「自然の景観が復活した川に、ドブ川時代の痕跡はいらない」という住民もいるという。だが、私のような外国人にも、ソウルがいかに急速に変化してきたかを実感させてくれる遺産だ。大切に残してほしい。 (相坂穣)