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ソウル 身近になった大統領

2022年09月09日

 日本風の居酒屋が並び、道行く親子が日本語を話す。ソウル市龍山(ヨンサン)区の二村(イチョン)一帯は、ソウルの「リトル東京」と呼ばれる。1960年代に朴正熙(パクチョンヒ)政権が漢江(ハンガン)沿いの低地を改良して外国人向けマンションを建設。日本人駐在員の家族が多く住むようになった。

 私も二村の住人の一人だが、最近、大きな変化を目撃している。5月に就任した尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が、都心部の旧大統領府「青瓦台(チョンワデ)」から執務室を二村とも程近い国防省庁舎に移転させた。地下鉄二村駅周辺でも、私服警官や機動隊が24時間、警戒するようになった。

 住人が夜にお酒を飲んで帰宅したり、早朝などに散歩をしたりしていて、職務質問を受けたという話もよく聞く。だが、韓国人の知人の多くは不満より歓迎ムードが強い。

 毎朝、尹氏が大統領専用車で執務室に通勤する姿は日常の風景になった。訪韓したバイデン米大統領が尹氏との会談に向かう姿を見た人もおり、政治を身近に感じるようになったという。尹氏は「国民の中に入り、疎通する」と公約を掲げたが、滑り出しは上々のようだ。 (相坂穣)