2023年01月21日
ロシア中部のケメロボは炭鉱の都市。高止まりしている石炭価格の恩恵にあずかり、街には、しゃれたカフェや整備の行き届いた公園が並ぶ。政権支持率も高いとされる。
9月20日、出張でケメロボに着くと、モスクワにいる助手からメールが届いた。ロシア政府が国民の動員を準備しているという。ウクライナの4州を併合する動きも伝わってきた。
悲観的な局面だった。スマホから目を離すとカフェではカップルが談笑し、公園では親子連れが遊んでいる。日常に浸っているロシア人に向かって叫びたい気持ちだった。「戦争が来るからみんな逃げて」と。
「部分的動員」が翌日に公式発表されると、ロシア全土が少なからずパニックに陥った。各地の知事も「戦時体制」と言い始めた。一部のロシア人は国外脱出を試みた。でも航空券は既に売り切れ。
モスクワに帰って空港で取材したが、出国できたのは、新聞やネットで20日までに異変を察知した人ばかり。日本では新聞を読めば、受験や就活に有利と言われているが、現在のロシアでは命を守るための情報源でもある。 (小柳悠志)