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韓国・坡州 北を実感する展望台

2023年02月27日

 季節の変わり目に新型コロナウイルスに感染してしまい、1週間の自宅隔離を余儀なくされた。ミサイル発射などで緊張を高める北朝鮮の記事は、韓国軍の発表や専門家への電話取材などで構成できるため、自宅でも何とか執筆作業が可能だ。

 「現場感」のない日々を過ごしながら、少し前に訪れたソウル北方の坡州(パジュ)市の烏頭山(オドゥサン)統一展望台を思い出した。眼下を流れる臨津江(イムジンガン)を挟んで北朝鮮を望む立地。備え付けの望遠鏡をのぞくと、対岸の村内を行き来する人の姿が見えた。「本当に北朝鮮の人がいる!」と新鮮な驚きがあった。

 案内してくれた坡州在住の権起禄(クォンギロク)さん(49)によると、韓国人でも普段は遠い存在だった北朝鮮を実際に目の当たりにして、感銘を受ける人が多いという。権さんは、北朝鮮のミサイルへの対抗策として「先制打撃」などに言及する現政権に「ここに住んでいる身からすれば、戦争につながる話はしてほしくない」と眉をひそめた。

 ソウルにいると実感が伴いづらいが、南北の境界近くで暮らす人にとって、平和はより切実な問題なのだと、胸に刻みたい。 (木下大資)