2023年02月28日

　英国は夏以降、大きなニュースが続き、政治も混迷を極めた。東京のデスクから「お祓（はら）いしたら」と言われる始末。確かにお参りしたい気分だ…と思いながら英国人の知人に聞くと、「カンタベリーはどう？」。

　ロンドンから電車で１時間強、英南東部のカンタベリーは英国国教会の総本山、カンタベリー大聖堂があるところ。日本のガイドブックを見ると「お伊勢参りにそっくり」とあった。ここだ。早速、同業他社の女性支局長を誘ってお参りに行った。

　１４世紀の作家、チョーサーの「カンタベリー物語」は、ロンドンからカンタベリーに向かう巡礼の一行が時間つぶしに語る庶民のよもやま話。まさに同物語さながらに、友人の支局長と人生の受難や喜怒哀楽を語りながら、大聖堂へ。宗教は違えど、歴史ある荘厳な雰囲気に感動しながら、ろうそくをともして静かにお祈りをささげた。

　お参りの後はおかげ横丁、ならぬ門前町へ。「太った巡礼者」という巨大なスコーン風の焼き菓子が人気と聞き、舌鼓を打ってきた。普通に伊勢観光のように楽しい旅になってしまったが、お参りの効果で平穏な世が訪れますように。　（加藤美喜）