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北京 夜空を彩るドローン

2023年05月30日

 日本で夜空を彩るものといえば花火だろう。中国の春節(旧正月)には爆竹や花火がつき物だが、最近では安全のため、都市部ではご法度になっている。代わりに夜空を彩るのはドローンだ。

 北京の中心地から100キロ以上離れ、万里の長城で有名な観光地古北水鎮(こほくすいちん)。夕食を終えてショーを見に行くと、ドローンが次々と光りながら飛び立ち、観光客は一斉にスマホのカメラを空に向けた。「2023」やハートなど単純な形から始まり、万里の長城や干支(えと)のウサギなど次第に難易度を上げ、最後は「古北水鎮」の漢字が夜空を飾った。合間の移動も複雑な編隊飛行を見せ、制御の精密さに舌を巻いた。東京5輪の開会式でドローンのショーが話題となったが、まさか中国の山間地で見られるとは思わなかった。

 一方、一糸乱れずに動く数百台のドローンを見て、ヒチコック監督の映画「鳥」で、鳥の群れが人を襲う場面を思い起こした。中国でも軍事技術として注目されるドローン。華麗なショーで人々を喜ばせるドローンが、人を襲う手段に使われるかもしれないと思うと、背筋が寒くなった。 (石井宏樹)