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ソウル 明洞の客引きの本音

2023年05月31日

 「お兄さん! 完璧な偽物のカバン、時計はどう」。先日、ソウル中心部の明洞(ミョンドン)を歩いていて、怪しい日本語が聞こえてきた。違法な偽ブランド店の客引きの男たちのようだが、その種の人々に出くわすのは久々で、思わず噴き出してしまった。

 もともと明洞は、洋服や化粧などファッション関連や飲食の店が立ち並び外国人に人気の地区だったが、2020年の新型コロナウイルス拡大以降、来訪客が激減。一帯の空き店舗率は21年冬に50%を超え、「明洞は死んだ」といわれた。だが韓国政府が入国規制を緩和した昨年後半から活気が戻ってきた。

 明洞の客引きらは、道行く客の国籍を瞬時に見分け、それぞれの言語で声を掛ける特殊技能を持つといわれる。そのうちの一人に事実かと尋ねてみると、意外な答えが返ってきた。

 「最近の若者は、流行の髪形や服装をネットで調べるので、日本人も中国人も台湾人も特徴が薄くなり、区別しにくい」。彼はそう語った後、40代の私を見る。「あなたは日本人だとすぐ分かった。年を取った人は、各国の個性を大切にしている」。褒め言葉と受け取って良いのか、迷った。 (相坂穣)