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米ミドルタウン 笑いのネタじゃない

2023年05月22日

 米東部ペンシルベニア州ミドルタウンは、廃炉作業が進むスリーマイル島原発に近い小さな街だ。パット・デブリンさん(40)は2015年に、市街地活性化策の一環で誘致を受けてビアレストランを開いた。

 最初に売り出したビールは「TMIPA(スリーマイルアイランド・ペールエール)」。ラベルには、原発の煙突を描いた。コーヒー豆「ニュークリア・ビーン(核の豆)」を売ったこともあるし、19年に原発が完全閉鎖に至った際には「メルトダウン(炉心溶融)」というビールを振る舞った。

 日本では物議を醸しそうだが、デブリンさんは「クレバーだろ?」と得意げ。そういえば、同僚が西部ニューメキシコ州にある世界初の核実験場跡地に出張した際、「ファットマン」とプリントされたTシャツを着た男性がいたという。長崎県に落とされた原爆と、文字どおり「太った男」をかけたジョークだ。

 米国人は笑えるのかもしれないが、原子爆弾の犠牲になり、過酷な原発事故も経験した国の人間としては、核を笑いのネタにするのはちょっと勘弁してほしいなと思った。 (吉田通夫)