2023年05月23日
取材でイエメン南部アデンを訪れた。住民の大半はイスラム教徒。女性の多くは目以外を隠す黒い衣装「ニカブ」を身に着けていた。せっかくなので、私も滞在期間中はニカブ姿で過ごしてみた。
ニカブはイスラム教徒の中でも、より保守的な女性が身に着ける。まず、普段着の上から全身を覆う衣装「アバーヤ」をかぶり、その次に髪を隠す布「ヒジャブ」を着ける。最後に、ヒジャブの上から鉢巻きを巻くように、目以外を隠す布「ニカブ」を着けて完成する。
ニカブ姿の日本人は、地元の人から大いに歓迎された。「イスラム教徒?」と聞かれるたび、「違うけど、ここの文化や風習を尊重しているから」と説明した。目だけしか出ていない私だが、笑顔で受け答えしていることは相手にも伝わり、最終日には「マリアム・ブワジール」という地元名まで頂戴した。
ニカブの女性の表情は読みづらく、なじみの薄い人からは「怖い」と思われがちだ。しかし、自分がニカブ姿で過ごして思うのだが、黒い布の一枚下にあるのは、欧米でも日本でも見かけるごく一般的な女性の笑顔だったりする。 (蜘手美鶴)