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【静岡】「富士山絵画」の変遷 富士山世界遺産センターで特別展

ジャンル・エリア : 展示 | 芸術 | 静岡  2018年09月25日

襖の表に描かれた狩野栄信「竹林七賢図」=県富士山世界遺産センターで

襖の表に描かれた狩野栄信「竹林七賢図」=県富士山世界遺産センターで

 県富士山世界遺産センター(富士宮市宮町)は初の特別企画展「富士山絵画の正統」を開催している。2部構成で、第1部「富士山図 定型の生成とその変奏」(10月14日まで)では、絵画の1ジャンルとしての「富士山」が定着するのに大きな役割を果たした狩野派の活躍に着目。江戸期の作品を中心に、同派7人の12点を展示している。

 1部、2部を通じて中心となるのは狩野栄信(かのうながのぶ)(1775~1828年)と養信(おさのぶ)(1796~1846年)の親子。いずれも将軍家御用絵師筆頭として、その時代に1人しかいないトップ絵師の「法印」に叙され、それぞれ「伊川院(いせんいん)」「晴川院(せいせんいん)」を名乗ることを許された。

狩野養信「富士三保松原図」(4枚組みの1部)=県富士山世界遺産センターで

狩野養信「富士三保松原図」(4枚組みの1部)=県富士山世界遺産センターで

 今回の目玉は、臨済寺(静岡市葵区)の襖絵(ふすまえ)で、父・栄信の「竹林七賢図」と息子・養信の「富士三保松原図」が表裏に描かれている。寺が文政6(1823)年ごろに再建された折、書院の間仕切りとして納められて以来、門外不出とされてきたが、初めて外部の施設で展示される。寺は今川義元や徳川将軍家の信仰があつく、襖の引き手部分には葵の御紋も刻み込まれている。

 このほか、狩野探幽(たんゆう)(1602~74年)の「富士山図」や、狩野常信(1636~1713年)の「秋景富士三保清見寺図」など展覧会初出品の貴重な作品を通し、狩野派がどのように富士図を受け継ぎ、発展させていったかを系統的に俯瞰(ふかん)できる。センターの松島仁教授(美術史)は「狩野派の富士をこれだけ集めた展覧会は過去にない。貴重な機会をとらえ、ぜひ楽しんでいただきたい」と話している。

 2部「巨匠たちの競宴 富士越龍(ふじごしのりゅう)」(10月20日~11月25日)は、栄信・養信親子と同時代に活躍した葛飾北斎や谷文晁(たにぶんちょう)らが描いた「富士と龍」をモチーフにした作品を集める。いずれも常設展の観覧料を含め大人700円、70歳以上200円。大学生以下と障害者は無料。特別企画展のみの観覧はできない。11月3日午後1時半から松島教授によるギャラリートークがある。

(前田朋子)