ジャンル・エリア : テーマパーク | 乗り物 | 展示 2022年02月24日
少しずつ気温が高くなってきた平日の昼間、晴れとも曇りとも言えないぼんやりした天気で、滑走路と伊勢湾と空の境界線もぼやけている。遠くの船が、宙に浮いているように見える。ぼおっとしていると旅客機がゆっくり離陸していった。どこに行くのだろうか。高度を上げる機体を目で追いかけていると、あくびが出てくる。春だなあ。
飛行機での遠出が縁遠くなってから2年。少しでも旅行気分を味わえるかと、愛知県常滑市の中部国際空港へと出掛けた。経由地として立ち寄ったことはあるが、目的地として訪れるのは初めてだ。
平時は観光客やビジネス客などさまざまな目的の旅行者や、送迎者でごった返す第一ターミナル出発ロビーは、コロナ禍の影響で閑散としている。普段は人混みをかき分け、出発時刻を気にしながら通り過ぎるロビーをのんびり歩く。
搭乗口の真上にある屋外デッキに出ると、目の前には出発待ちの旅客機と滑走路。大きなレンズを持つ航空ファンや、スマートフォンを持つ家族連れが、思い思いに写真を撮っている。デッキには撮影テクニックを紹介するパネルがあり、本格的な機材がなくても楽しめる。
飛行中の機体情報をリアルタイムに配信するアプリもある。離陸する飛行機の行き先や、もうすぐ着陸する飛行機の航路を調べながら滑走路を眺めていると、あっという間に時間が過ぎる。
屋内で休憩したくなったので、ボーイング787の初号機を展示している「フライト・オブ・ドリームズ」へ。機体は3階建ての吹き抜け部分にあり、1階では真下から、3階では上から、さまざまな角度から機体が見える。
1階の「フライトパーク」は昨年末にリニューアルを終えたばかり。787の機体の下に設けられたキッズエリアでは滑り台や手こぎ車などで遊ぶ子どもたちでにぎわっている。2階フードコートの一部客席には電源もあり、リモートワークにも使えるスペースとしても開放されている。遊びに来た親子連れと、ビジネスマン。全く異なる目的の人が同じ施設の中にいるのが、いかにも空港らしい。
私もたまっている原稿を書き進めようとパソコンを広げたが、目の前の787のエンジンに気を取られる。結局仕事は諦め、のんびり飛行機を堪能してしまった。航空ファンにはたまらない施設だ。 (大山弘)
▼ガイド 名鉄の駅に直結する中部国際空港へは、名古屋駅から最速29分。津市と結ぶ連絡船もある。スカイデッキは入場無料で当面は前7時~後8時。フライトパークは前10時~後5時で、一部有料施設もある。セントレアテレホンセンター(電)0569(38)1195
(中日新聞夕刊 2022年2月24日掲載)