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【長野】なでなで 心も体も軽く びんずる尊者 長野市

ジャンル・エリア : グルメ | 歴史 | 甲信越 | 神社・仏閣  2023年06月08日

戻ってきたびんずる尊者像に触れる参拝者=長野市の善光寺で

戻ってきたびんずる尊者像に触れる参拝者=長野市の善光寺で

 新聞を読んで驚きました。長野市の善光寺で「びんずる尊者像」が盗まれたって!

 今年4月のことです。

 びんずる尊者はお釈迦(しゃか)様の弟子です。その木像に触ると病気が治るという言い伝えがあり、300年以上にわたって善光寺を参拝する善男善女に親しまれてきた像なのです。幸い、すぐに見つかりお寺へ戻った姿を中日新聞も報じましたから、ご存じの読者も多いかと思います。撮影は長野支局の長尾明日香記者。

 この写真を見るうち、私もびんずる尊者に会いたくなりJR特急「しなの」に乗って長野へ向かいました。名高い「牛に引かれて善光寺参り」ではなく、「びんずるさまに惹(ひ)かれて善光寺参り」です。

 多くの人に交じって本堂に入ると、びんずるさまが鎮座しておいでです。その前には長い列ができていて、ふだん行列の嫌いな私も喜んで並びます。読者の皆さまの分まで頭から胸やおなか、腰など、あちこちをなでてみました。

 本堂から退出すると、境内には多くのテントが立ち並びにぎやかです。何だろう、と思って訪れてみますと、月に1度の「善光寺びんずる市」という催しでした。まったく知らずに来たので、なんだかラッキーという気分です。

 手芸やら木工、陶芸など、思い思いのお店が出ていて、本部の方に出展数を尋ねると「お店が101、キッチンカー7つの計108です」。108。ちょうど人間の煩悩の数だけあるのですね。最強の煩悩の1つ・物欲に負けてしまい、サクラの木で作ったまな板や若い友人に贈るベビー服など次々に買い求めました。

 
長喜園さんでいただいた生クリームどら焼きとお茶のセット

長喜園さんでいただいた生クリームどら焼きとお茶のセット

 びんずる市を見終えたら、参道を長野駅の方にぶらぶら散策してみます。すると1軒のお茶屋さんがありました。1904年の創業という老舗「長喜園」です。長野支局の同僚の北村希記者から教えてもらったお店です。

 店内にはお茶のいただける席があり、店内で職人さんが焼き上げるという生クリームどら焼きとお茶とのセットが400円でした。観光地とは思えない良心的な値段の上に「お代わりをどうぞ」とたっぷりのお茶入りポットも添えてくださいました。

 
お店の奥から見た「朝陽館」。写真の奥、つまりお店の入り口の方がカフェになっています=いずれも長野市で

お店の奥から見た「朝陽館」。写真の奥、つまりお店の入り口の方がカフェになっています=いずれも長野市で

 さらに歩いていましたら、瀟洒(しょうしゃ)なお店を見つけました。「書肆(しょし)朝陽館」です。書店兼カフェで、店の設計や本棚の配置から選書のセンスまで、感嘆する名店です。

 残念ながら、日本の地方のまちで今、書店が次々に姿を消していきますが、朝陽館のようなすばらしい本屋さんもある、とうれしくなります。

 この2つのお店を訪れる、そのためだけでもまた長野に行きたい-と、自宅に戻って考えていたら、ふと気づいたことがあり、いつもの悩みの腰痛が軽快しているのです。びんずるさまのおかげだな。うん、やはりぜひ長野を再訪しなくては。 (三品信)

 

▼ガイド 「善光寺びんずる市」は12月までの毎月第2土曜に、善光寺周辺で開かれます。小雨決行。問い合わせは「善光寺びんずる市事務局」(電)026(219)2401。「長喜園」は不定休。営業は平日が前9時から後6時半まで、土・日が前10時から後5時までです。生どら焼きのほか、あられやタルトタタン、宇治抹茶チーズケーキなどもあります。(電)026(232)2511。「書肆朝陽館」は火・水定休で、営業は前11時から後7時。店内には喫茶「皎天ノ刻(こうてんのこく)茶房」と、よりすぐりの雑貨を集めた「栩栩然(くくぜん)」があります。(電)026(217)6616。

(中日新聞夕刊 2023年6月8日掲載)