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【静岡】浜名湖のシンボル「赤鳥居」愛され半世紀 設立時には反発あり、苦労も

ジャンル・エリア : サブカルチャー | | 静岡  2023年08月21日

弁天島シンボルの赤鳥居。奥は浜名大橋=8月、浜松市西区の弁天島海浜公園で(田中利弥撮影)

弁天島シンボルの赤鳥居。奥は浜名大橋=8月、浜松市西区の弁天島海浜公園で(田中利弥撮影)

 JR東海道線の車窓から浜名湖を望むと、ひときわ目を引く「赤鳥居」。浜名湖の観光シンボルとして親しまれている「弁天島観光シンボルタワー」(浜松市西区舞阪町)が、15日で建設50周年を迎えた。舞阪町議として設立に尽力した元舞阪町観光協会会長の浅野鉞郎(えつろう)さん(95)は「この先の時代も永遠に浜名湖の象徴として残ってほしい」と願う。

 弁天島海浜公園のいかり瀬に立つ赤鳥居は、舞阪町観光協会が1973(昭和48年)年に建てた。2005年に当時の町が発行した「舞阪町歴史散歩」によると、総工費は2450万円だった。

 設立当時、浜名湖に架かる浜名バイパスはなく「平らな海がどこまでも続く平凡な眺望だった」と浅野さん。「舘山寺には大草山がある。弁天島にも何か観光のシンボルがほしい」と、観光協会や地元の旅館組合で機運が高まる中、ホテル白砂亭(舞阪町)で働いていた浅野さんも募金箱を片手に、地元旅館を回って資金集めに奮闘した。

 課題もあった。建設予定地が国有地だったため、県内の宗教団体が「国有地に特定宗教のシンボルを建てるのは憲法違反」と猛反発した。浅野さんらは「たまたま鳥居の形をしたシンボルタワー」と必死に説得。建造物の東西に白文字でシンボルタワーと明記することで折り合いをつけた。

 高さ18メートルの「鳥居の形をした建造物」は、広島県廿日市市の厳島神社の大鳥居(16.6メートル)をしのぐ。そのため、日本三景の1つ「安芸の宮島」側から1本の電話が届いた。

 浅野さんは「弁天島は海上の鳥居では国内で1番大きいから、宮島側は心配したのかも」と振り返る。宮島の材質は天然木材に対して、弁天島は潮に強く半永久的に腐らない特殊鋼を使用する。「タワーの材質を告げると宮島の担当者は安心して電話を切った」と述懐した。

 完成から半世紀を迎えても、赤鳥居は観光客や写真愛好家たちが集う名所だ。浜松市出身の漫画家あfろ(あふろ)さんの作品「ゆるキャン△」では、赤鳥居の中に夕日が沈むシーンが印象的に描かれている。舞阪町観光協会の担当者は「近年はアニメや交流サイト(SNS)の効果で、県外から若い世代の観光客も増えている」と語る。

 観光協会によると、当時の設計に関わった関係者は年々減少した。浅野さんは「苦労した今はいない観光協会の仲間たちの思いが、半世紀越しにかなったのかな」とほほ笑む。完成から半世紀がたち、すっかりシンボルとして定着した赤鳥居に浅野さんは優しく目をやった。 (山本晃暉)