2012年02月03日
「日本の方々なら、この苦しみを理解してくれるはず。メッセージを届けてください」。アサド政権による反体制運動への弾圧が続くシリア。政権から離反しエジプトのカイロに亡命した高官は、会うなり記者の手を固く握って懇願した。
昨年3月以降、治安当局に殺害されたデモ参加者らは5000人を超す。犠牲者が170人に上った日も。自身も無差別発砲で若者が殺されるのを目撃した。政権は昨年2月、エジプトの民衆革命でムバラク大統領が退陣するのを見て、武器を仕入れ、反体制運動に備えたという。
暗く冷たい収容所は今、拘束された人々であふれる。経済や暮らしは急速に悪化。地域によっては、寒さをしのぐため、人々は家具を燃やし毛布を分け合う惨状だ、という。
実態を世界に知らせようと先月、家族とエジプトに出国。到着した後も、政権の周辺からいくつか脅迫が届いたという。だが、ひるんではいられない。
「毎日、自国民が虐殺されているが、どうすることもできない。日本も戦争で多くの人が犠牲になった国だ。力を貸してほしい」
シリア危機の解決には、思惑も絡みつつ、さまざまな国や機関が動いている。だが日本の姿は見えてこない。高官の手を力強く握り返すことができなかった。(今村実)