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ブリュッセル 強いドイツに「二矢」

2012年08月30日

 6月28日のほぼ同時刻。欧州では2つの場所でドイツ対イタリアの激戦が繰り広げられた。1つはサッカーの欧州選手権準決勝の会場となったワルシャワ。もう一方は欧州連合(EU)首脳会議の場ブリュッセルで。

 会議では、イタリアのモンティ首相が金融市場安定化策の実施を求め、ドイツのメルケル首相が反対論を展開し衝突。非公開のため結果を待ちながら、欧州各国の記者たちは建物のカフェでテレビ観戦に臨んだ。

 次第に熱気を帯びていき、大歓声が響く。そんな騒ぎが首脳たちの耳に届いたのかもしれない。カフェでのビールの提供が中止になった。それでも、観戦は続く。

 本来は会議の進展を伝えるはずの欧州の記者たちのブログに突然、サッカーの試合経過が登場する。なんだか、2つの戦いが混然一体としてきた。

 最も大きい歓声と拍手で試合は終わりを告げ、会議は未明まで続いた末に終わった。いずれも下馬評を覆すイタリアの勝利。その勝利に歌を歌って、はしゃいだ東欧の女性記者数人は会議の結果を知って、またにっこり。多くの記者もその結果を望んでいたようで、雰囲気は明るい。

 「強いドイツに一矢を報いてほしい」。そんな気持ちが2つの戦いに向けられていたことをひしひしと感じた。 (有賀信彦)