2012年11月14日
部屋に入ると、大きなポスターが目に入った。スタジオジブリの宮崎駿監督の作品「千と千尋の神隠し」だ。
米国での日本アニメについて取材するため、マサチューセッツ州ボストン郊外のタフツ大学に、この道の権威、スーザン・ネイピア教授を訪ねた。
「宮崎作品では、千と千尋の神隠しが一番好き。数え切れないほど見た」とはにかむ。
「日本的な背景を持つ話だけれど、何か神聖な普遍的なものを感じる」。流ちょうな日本語で、話しだすと止まらない。
昔、大学関係者らが集うパーティーに出席した時のこと。ある男性が「研究テーマは?」と聞いた。「日本のアニメです」と答えると、男性はそそくさと遠ざかって行った。「当時は、変わった人だと思われていた」
過去10年でアニメは、そのまま英語にもなるなど米国文化にすっかり定着した。研究を始めた二十数年前は、一部が信奉するサブカルチャーだった。
米国のアニメは、スーパーマンやバットマンなど主人公が男性ばかり。それに比べ「日本は多様性があり、視聴者が感情移入できる」とも指摘する。
時代の波の中で、時には苦難をも創作の糧にしてきた日本のアニメ。東日本大震災の被害に心を痛めつつ「今後のアニメの変遷に注目したい」と見守る。(長田弘己)