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香港 日本外交弱点見えた

2013年01月25日

 知人の陶芸家が香港で個展を開き、オープニングパーティーに出席した。会場は丸みを帯びた形に水玉模様の作品とともに、欧米人の姿が目立つ。フランス人が経営する画廊が香港在住の欧米人向けに企画したといい、香港の国際性をあらためて実感する。

 経営者にあいさつすると、彼は開口一番「どうして日本の外交は自国の芸術に冷たいのか」と詰問してきた。前日開いた食事会への招待状を日本の総領事館に出したが誰ひとり来なかったという。

 フランスではこうした会食は各国外交の交流の場になるといい、「フランスやスウェーデンの総領事も来たのに残念です」と理解に苦しむ様子。日本にも長年滞在経験のある彼は「日本がこのような姿勢では、今の日中関係で自国の立場を各国に理解してもらうのは難しいのではないでしょうか」と続けた。

 日本人というだけで特別扱いするわけにいかない事情も理解できる。しかし日本流の「事なかれ主義」は、海外ではマイナスとなりかねない。尖閣諸島の国有化問題では、主張の根拠はともかく、領有権を積極的にアピールする中国に押されているのは確かだ。

 経営者の持論に耳を傾けていると「この個展も宣伝してくださいね」とちゃっかり。これがフランス流の「外交術」かと変に納得した。 

(新貝憲弘)