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ジャージーシティー 金勘定は健康に悪い

2013年02月27日

 3歳の息子が年の瀬に、救急車の世話になった。家族で訪れた米東部ニュージャージー州ジャージーシティーの教育施設で、椅子から落ちて頭を床に強打。直後に眠り始めたため、「脳振とうじゃないか」と慌てた大人が救急車を呼んだ。

 救急車は数分で駆け付け、これまた数分離れた最寄りの病院の救急治療室に担ぎ込まれた。すぐに担当医が現れ診察。看護師からもらったおもちゃで機嫌を取り戻していた息子は、頭にたんこぶができただけで無事だったことが分かった。

 ホッとひと息をついた病室内で頭をよぎったのが、「治療代はいくらか」。

 ある銃の事件の取材で、弁護士から「(被害者は)自己負担で治療代を一千数百ドル(十数万円)請求された」と聞いていた。

 マイケル・ムーア監督が米国の医療事情を描いた映画「シッコ」では、高額な救急車使用料金に悩む女性もいたっけ。

 米国では薬の大量摂取で毎年多くの人が死亡する。日本のような国民皆保険制度がなく、多額の治療代を自己負担しなければならない無保険者もいるため、病院を避け、素人判断で服用するからだともいわれる。

 幸い、息子の分は保険で全額カバーできたが、毎回、治療代におびえるのは精神衛生上悪い。

 (長田弘己)