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蘆山県 被災者から思いやり

2013年05月23日

 「ぜひ食べていってください」。四川省雅安市蘆山県の地震発生現場を歩いていると、被災者の若い男性に不意に声を掛けられた。

 男性は全壊した家の前でれんがを積み上げてかまどを組み、昼食のおかゆを準備していた。取材中に被災者から食料をもらうことはためらわれたが、他の記者も含めて熱心に勧めてもらい、話を聞きながら、ありがたく頂くことにした。

 聞けばその全壊した家の下敷きになり、親戚の女性(45)が亡くなったのだという。そんな深刻な事態にもかかわらず、被災者でもない記者たちにまで心遣いをしてくれるとは。胸が熱くなった。

 しばらく後、道端でパソコンを開いていると、「何をしてるの?」と若い女性が人懐っこい笑みを浮かべて近づいてきた。原稿を送っていると説明すると、「こうしたら見やすい?」などと、パソコンの上で日傘を掲げ続けてくれた。

 すぐそばにあったその女性の家も、亀裂が入って使い物にならなくなっていた。「これからどうするの?」と聞くと、「避難するしかないわね」と肩をすくめた。そこに悲愴(ひそう)感はなかった。

 被災地は農村地帯で、人々は素朴に、人を思いやりながら生活を営んできたのだろう。早く日常を取り戻してほしい、と願ってやまない。 (佐藤大)

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