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アボタバード 「見せない」お互い様

2013年07月03日

 パキスタンの首都イスラマバードから北へ車で約2時間半。アボタバードの住宅地で車を降り、目指す場所に近づいたとき、どこからか突然現れた2人の男に呼び止められた。

 2年ぶりに訪ねようとしたのは国際テロ組織アルカイダ創設者のウサマ・ビンラディン容疑者が潜伏していた邸宅の跡地。2011年5月に米特殊部隊に殺害された後、邸宅はパキスタン政府によって取り壊されていた。

 男らは持ち物やカメラの画像を調べ、「町に入る許可を持っているのか」と迫ってきた。地元の公安担当者らしい。町に入るには内務省か州の許可が必要ということだった。

 「跡地を見に来ただけだ」と言うと、男はどこかに電話をかけて指示を仰いだ後、「米国の記者なら警察に引き渡すが、日本は友好国だ。町に水道も造ってくれた。町を出れば許してやる」。

 どこまで本当の話か分からなかったが、「逆らわない方がいい」と現地の助手に言われ、悔しかったがあきらめた。男の背中越しに邸宅跡らしき土台が見えたので、「あれがそうか」と聞くと、男はニヤリとうなずいた。

 そこでもう一度粘ると、「米国はビンラディンの死体を見せなかっただろ。だからわれわれも邸宅跡を見せないのさ」。帰りは軍の車両に車の前後を挟まれ、誘導されて町を出た。 (杉谷剛)

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