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モスクワ 国民に増えた無関心

2013年10月17日

 ロシア語で「ヌ・イ・シュト?」という言い回しがある。「だから何?」「関係ないね」といったニュアンスだが街で最近、この言葉をよく耳にする。

 8月22日の「国旗の日」に、首相府前で野党勢力が行った集会を取材した。集会は、改革に反発した旧ソ連共産党保守派が全権掌握を宣言し、当時のゴルバチョフ大統領を軟禁した1991年8月のクーデターが未遂に終わったことを記念している。参加者はこの集会で毎年、「ロシアの一層の改革」を呼び掛けている。

 ただ、金属探知機が付いたゲートと、仕切りの簡易鉄柵に囲まれた長さ100メートルの路上に集まった市民は、せいぜい数百人。ゲートを出た間近の映画館前で、瓶ビールを飲みながら談笑する若者らに「あの集会に興味ない?」と問うと、返ってきた答えは冒頭の「ヌ・イ・シュト」だった。プーチン政権は昨年5月の発足後、国民の自由を制限する法律を相次いで制定した。「ソ連時代への逆戻り」と懸念を深める市民は増えているが、国を改革する気概を失った人もまた増えている。

 ロシアの独立系世論調査機関の7月の最新調査では59%の国民が「政治を考えると気がめいる」と回答。政治への失望が無関心に確実に変わっている。政権側の国民抑圧政策が「奏功」した結果ともいえる。 (原誠司)