2014年06月13日
浙江省の省都である杭州を訪れた。古来「上有天堂、下有蘇杭(天上には極楽が、地上には蘇州、杭州がある)」とたたえられた名勝地である。元代に訪れたマルコ・ポーロは「地上の楽園」とまで、街の美しさを絶賛したという。
詩人蘇東坡(そとうば)が春秋時代の絶世の美女、西施に例えて「西施湖」とも詠んだ名水、西湖に足を運んだ。
そのほとりには、南宋時代の名将として名高い岳飛の廟(びょう)。女真族の金と通じた宰相秦檜(しんかい)の陰謀により、忠臣岳飛は無実の罪で毒殺された。
今も、廟内では秦檜夫妻ら裏切り者の像が、岳飛の墓の前で跪(ひざまず)き、さらし者にされている。禁止されるようになったが、像に唾を吐き掛ける観光客が引きも切らなかったという。
死者にむち打たないわが国と比べ、国や民族への裏切り者を永遠に厳しく裁く歴史観…。
思い起こせば、杭州は習近平国家主席が省トップとして出世の地歩を固めた地。
政権のスローガンは「中華民族の偉大な復興」。主席は岳飛廟の前で、民族の心に響くような統治の青写真を描いたのかもしれぬ。 (加藤直人)