2017年03月22日
香港島の繁華街にある「鵝頚橋」下の空き地で「スパーン、スパーン」と軽快な音。「拝神婆」と呼ばれるおばあさんたちがスリッパで悪縁を絶つ「打小人」という儀式だそうだ。
まず依頼主が、仕事や恋愛で邪魔となる人の名前を紙に書き込む。拝神婆は観音様や道教の神様にお祈りし、呪文を唱えて紙をスリッパでたたく。70歳ほどのおばあさんに何かが憑依(ひょうい)したようになり、何分間も全力でたたく姿は迫力がある。
最後に紙を燃やし、木片を投げて儀式は終わる。料金は50香港ドル(約750円)程度で、若者も含めて次々と客が訪れる。私もおばあさんに声を掛けられたが、誰かに呪いをかけるようで遠慮した。
中国の古典小説「紅楼夢」にも「呪い人形」が登場するが、香港の友人は「違うよ。打小人は相手は呪わない」と解説。運命の間違いでつながった悪縁を絶ち、別々の道を行く前向きな風習だという。
縁を切りたい相手はいなくとも「お清め」で受ける人もいるそうだ。仕事柄、すぐ人を疑って見る自分の性根も清めてもらえば良かったかなと、少し後悔した。(平岩勇司)