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上海 初詣に見る国の実相

2017年04月03日

 春節(旧正月)に、1800年の歴史を誇る上海の名刹(めいさつ)、静安寺に初詣に出掛けた。

 いつもは50元(約850円)の拝観料が、3倍の150元に跳ね上がっていた。人の足元を見た値段だと思うのは、私のようなケチな外国人だけなのか、拝観券売り場には100元札を握り締めた人たちの長蛇の列ができていた。中国ではおなじみの割り込みもない。そんなことをすれば御利益が吹っ飛ぶ。

 ごった返す境内では、参拝者が30センチはある長い線香の束を手に、四方に向かって深々とこうべを垂れている。

 社会主義建設を進める中で宗教が否定された時代は過ぎ、中国で宗教が復活していると言われる。激しい競争にさらされ、格差が拡大する社会にあって、成功のチャンスと同時に転落のリスクにも直面すれば、神仏にすがりたくもなろう。

 大量の金が動く春節、拝観券売り場のおばさんは、100元札を渡されるたびに指でこすって偽札でないか確認する。その横には武装警察官が仁王立ちしていた。別の場所には自動小銃を抱えた武警も2人いる。神頼みと人間不信。どちらもこの国の実相に違いない。 (浅井正智)