2017年12月12日
暖かくなるために、寒くなるのを待っている。矛盾しているようだが、秋色深まるロシアではこんな気持ちにかられる。
その訳は、一定の気温以下にならないと暖房が作動しないから。ロシアでは給湯施設から各マンション、アパートに熱湯を送り、部屋を暖める集中暖房が一般的。個人に決定権はない。
ロシアの法律では、暖房が作動する条件は1日の平均気温8度以下が5日続くこと。9月末のモスクワではまだ暖房が効いていない地域も多いが、朝晩は気温1けた前半まで冷え込むので、寒くてしょうがない。
体調を崩す人も少なくなく、社会の大きな関心事だ。テレビ番組に出演したモスクワ市のソビャニン市長も「まだ気温が基準に達していないが(いつ暖房をつけるのかという)苦情は届いている」と早期対応を約束させられていた。
法律の例外措置はあるようだが、モスクワだけでも暖房経費は1日数億円単位と推計されており、むやみに早く暖房をつけるわけにいかない財政事情もあるようだ。この時期は特に、欧米の経済制裁などで先行き不安なロシア経済の回復を願う人が多いことだろう。 (栗田晃)