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中国・北川 癒えない悲しみ10年

2018年07月07日

 2008年5月の中国・四川大地震から10年を迎え、甚大な被害を受けた四川省北川チャン族自治県(北川県)を訪れた。

 16歳の娘を失った父親は、節目を前に、娘に文章をしたためたという。娘は手抜き工事が疑われる校舎の下敷きになった。

 「かわいい娘よ、天国で元気にしていますか?天国の校舎は倒れてこないでしょう」

 ここまで書くと涙が止まらなくなった。「2日2晩眠れなかった。耐えられなかった」と話す男性の唇は震えている。返す言葉がなかった。

 屋外のあずまやでトランプをしていた初老の女性4人に声をかけた。外国人の私に席をすすめてくれる。しかし、地震のことに話が及んだ途端、彼女たちの表情が曇った。

 「どの家も1人か2人は犠牲者がいる。思い出したくないから、毎日トランプをしているんだよ」。10年たっても癒えない悲しみの深さ。

 中国メディアは、復興の目覚ましさと、それを導いた共産党政権の指導の正しさばかりに光を当てる。現地で聞いた遺族の肉声とのあまりにも大きな落差に、中国が抱えるゆがみも思い知った。 (浅井正智)

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