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北京 寂しくなった助手席

2018年07月15日

 ようやくタクシーをつかまえ助手席に乗り込むと、運転手がかすかに怪訝(けげん)な表情を見せる。数年ぶりに北京で暮らし始め、こんなことが数回あった。

 以前は北京でタクシーに1人で乗るとき、助手席に座るのが一般的だった。最初は慣れなかったが、徐々に抵抗感がなくなった。「中国になじんだかな」と少し喜んだぐらい。

 だが、今では後部座席に座るのが主流らしい。何人かの中国人に尋ねると「いつの間にかそうなっていた」「そういえば最近は助手席に乗っていない」とあやふやにうなずく。

 理由はよく分からないが、こんな解説をする人がいた。いわく、スマートフォンでタクシーを探す配車アプリが普及し、運転手は運転しながら横目でスマホをにらんで、次の乗客を探さなければならない。結果的に助手席の乗客と会話する余裕がなくなった。乗客も運転手との会話より後部座席で自分のスマホを眺めるのを好むようになった。

 確かに助手席に座っても、運転手から話し掛けられることは少なくなっている。北京なまりのきつい運転手との会話に難儀することも少なくなったが、少し寂しい。 (中沢穣)

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