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ロンドン 「吾輩」も春だったら

2018年08月03日

 「おやおや、あなたにも『ロンドン着任期の法則』が出てしまったようですね」。在英30年以上の日本人の先輩に言われた。先輩の一時帰国をうらやましがったからだ。

 この法則によると、着任時期が春か秋かで、その後、ロンドンに住みたがるか、日本に帰りたがるか分かれるという。春に着任すると、どんどん日が長くなり、さわやかな夏を満喫し、冬も耐えられる。しかし、秋だと、いきなり暗く寒く長い冬に突入し、半年後に夏が来ても、冬の印象を引きずってしまう。

 確かに。昨年9月の着任後、冬の間は、暗い地中で常に「何か」を待っているような心境だった。おとずれた「春」は漠然とした「光」とか「空気」に近かった。穏やかな春の日差しを浴びても、冬の到来を想像するだけで、途端に憂鬱(ゆううつ)になる。

 約100年前の秋に留学した夏目漱石は「倫敦(ロンドン)に住み暮らしたる2年は尤(もっと)も不愉快の2年なり」と書き残した。自宅にこもりがちで、日本では「夏目発狂」とまでうわさされたという。

 文豪には申し訳ないが、そうはなりたくない。夏の間に、つらい冬を楽しく越す方策を見つけよう。 (沢田千秋)

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