2012年11月23日
市内を東西に横切る漢江(ハンガン)は、ソウル市だけでなく、韓国のシンボル的な川だ。一九六〇年代以降の高度経済成長は「漢江の奇跡」と呼ばれた。
川にかかる橋は三十一本。それぞれデザインが異なり眺めて良し、橋の上からの眺望も良し。夕方の渋滞もいい。運が良ければ、長さ一キロ以上の橋を渡る間に、広い空がオレンジからあかね色に移りゆく様子を楽しめるからだ。
ただ、水面から約二十メートルという高さが災いし身投げが後を絶たない。ソウル市によれば、最近五年間の投身は計九百九十三人。半数近くが命を落とした。
最多の百八人が身を投げた麻浦大橋は記者のアパートから歩いて五分。先日、近所の友人、朴珪萬(パクキュマン)さん(48)と歩いて渡った。
実際にここでの身投げを見たという朴さんは「話し相手も、慰めてくれる人もいなかったかと思うとつらい」と投身者を思いやった。
そして真顔で続ける。「韓国では投身前に靴を脱ぐ人が多い。日本もそうか? 投身したくなったら電話してくれ。駆けつける。靴だけじゃなく、財布も置いて飛び込んでくれ」
冗談を言い合える友がいる記者は幸せだ。微妙な問題を抱える日本と韓国。隣国の懸け橋になるような友人関係が各界各層で増えることを祈る。 (篠ケ瀬祐司)