2021年02月23日

　上海市の家電量販店に妻の誕生日プレゼントを買いに行った。狙いを付けていたｉＰｈｏｎｅのワイヤレスイヤホンを手に取り、ヒマそうにスマホを見ていた男性店員に会計を頼むと、「そんな高いものは誰も買わないよ」と見下したような表情を浮かべた。

　そして、「もっと良いのがある」と言ってスマホ上で指を滑らせ、写真を見せてきた。商品の形からパッケージまで、純正品そっくりだ。「友達が扱ってる商品だ。俺も使っているが使い心地は悪くない」。価格は約８００元（約１万３０００円）と、純正品よりも３割以上安い。

　模造品と異なるのは、箱の外側に「深セン○×科技公司」と実際の製造業者の名前が記されていることだ。その場で通信アプリの連絡先を交換して、送金機能で直接お金を渡す。誰かに電話してから３０分後、商品が届いた。

　他の店員が見ている中で白昼堂々と廉価品を販売する姿は、どこか懐かしい中国を思い起こさせるが、商品は実にしっかりしていた。その後もこの店に何度も足を運んでいるが、彼はやはり、ヒマそうにスマホをいじっている。　（白山泉）