2008年10月02日
南フランスのアビニョンで欧州連合(EU)外相会合があった日の夜、この街にある世界遺産の法王庁宮殿で、歌劇「カルメン」を題材にしたバレエの野外公演が催された。
真っ暗な客席でEU27カ国の外相たちが腰掛けたのは、ほかの客2000人と同じプラスチックの仮設いす。ホスト役のクシュネル仏外相が強く要望したという。芸術鑑賞の場だから「壁で仕切った特別席は必要ない」。
ただ、不用心では? これに真顔で答えてくれたのは、会場設営の責任者バロスティコス・フィリップさん(53)だ。
「今回は招待客ばかりだったので」。入場券のうち400枚は仏外務省、残りは地元自治体が身元のしっかりした人に無料で配ったという。さほど腹の据わった「特別扱い不要」でなかったわけだ。
ちょっとがっかりしたけれど、屈託のない説明はありがたかった。むやみやたらに美談をでっちあげたがる国もあるから。
(清水俊郎)