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コラム 花紀行

愛知県大府市「二ツ池公園」のフジバカマ

愛知県大府市「二ツ池公園」のフジバカマ

いくつかの台風とともに夏の気配が過ぎ去り、
急に秋になったように感じる今日このごろ。

秋らしく落ち着いた花を見たくて、
愛知県大府市の「二ツ池公園」へ
フジバカマの花を見に行って来ました。

フジバカマは、
『万葉集』の中で山上憶良が詠んだ
「秋の七草」の一つに数えられており、
古くから秋を代表する草花の一つとされてきました。

大型の蝶「アサギマダラ」が好む花としても知られ、
大府市ではこのアサギマダラを呼ぶために、
2019年からフジバカマの植栽に取り組んでいるそうです。

アサギマダラは、
季節に応じて(春は南から北へ、秋は北から南へ)
南西諸島から北海道を周遊する
「渡り鳥」ならぬ「渡り蝶」として知られ、
その移動距離は1000キロとも2000キロともいわれています。

この地域へは、
北から南下する「秋の渡り」の途上で立ち寄り、しばらく滞在するようです。

↑二ツ池公園の第一駐車場から園内へ。
すぐに満開のフジバカマの花壇が出迎えてくれました。

↑園内の案内図。
車イスでもスムーズに通れる散策路が巡らされていて、
西側の増田池を一周すると1080メートル、
東側の平戸池を一周すると540メートルあり、
ウォーキングに訪れる人も多いそうです。

↑「アサギマダラ飛来拠点プロジェクト」看板。
フジバカマとアサギマダラについて
わかりやすく説明してあります。

↑入り口から少し下る道。

↑左(北)の花壇のフジバカマ。

↑右(南)の花壇のフジバカマ。

↑花壇のすぐ東側は雑木林になっていて、
木漏れ日がちらちらと差し込む
ちょっとした広場もあります。

↑フジバカマは、ほぼ満開。

園内にある自然体験学習施設「二ツ池セレトナ」の島田館長によると、
フジバカマを植栽した2019年から、
毎年(9月下旬~10月中旬ごろ)アサギマダラは当園を訪れているそう。

今年は、
夏の暑さが関係してか、
フジバカマの開花時期が平年より2週間ほど早く、
アサギマダラの飛来は若干遅めとのことでした。

↑開花時は少し藤色がかっている花の色も、
次第に白色から淡い褐色へと変化していきます。

↑咲き始めの花を真上から見たところ。
花の中心が薄い赤紫色になっていて、
きれいですね。

筒状花5個単位で頭状花を形成し、
小さく五裂した筒状花の中から伸びているのは、
二裂したメシベ。

オシベは花びらの中に隠れていて、
外からは見えにくくなっているようです。

↑小さく歓声が上がった方を見てみると、
アサギマダラがふわふわと飛んで来て、
すぐ近くのフジバカマの花にとまりました。

蝶の中には羽の裏と表で色や模様が違うものもいますが、
アサギマダラの羽は裏も表もほぼ同じ模様で、
切り絵のようにくっきりしています。

↑結構じっくりとお食事されるタイプのようで、
ゆっくりと羽を閉じたり開いたりしながら
蜜を吸っていました。

↑逆光で撮ったアサギマダラ。
羽の浅葱(あさぎ)色の部分に
向こう側の羽の影が透けて、
ステンドグラスのようです。

胴体の部分の水玉模様も
きれいですね。

↑順光で見たアサギマダラ。
後翅(こうし)の下外側に黒い色があるのが雄の特徴。
(メスにはこの黒色がありません)

比較的大きくて丈夫な蝶だそうですが、
1000キロとも2000キロともいわれる移動の間に
ダメージを受けることもあるようで、
羽の一部が破れたように欠けている固体もいました。

↑入り口の花壇から池の方に少し歩くと、
二ツ池セレトナ(自然体験学習施設)の脇に
ちょっとした見本園のようなところがあって、
ここにもフジバカマが。

アサギマダラも、
ひらひらと遊びに来ていましたよ。

↑平戸池のほとりに咲いていたフジバカマ。
こちらは少し盛りを過ぎてしまっているようでした。

↑葉っぱや茎が赤いフジバカマも。
(環境のせいなのか、そういう品種なのかは不明)

園内では、
ほかにも多彩な季節の花を見ることができました。

↑左上から時計回りに、
ベニバナトキワマンサク、カタバミ、シキザクラ、
ツユクサ、コセンダングサ、アレチノハナガサ。
(いずれも推定)

ベニバナトキワマンサクは本来春に咲く花なので
見つけたときは少しびっくりしたのですが、
環境によって秋に咲くこともあるようです。

水辺と花に引き寄せられて、
多様な虫たちも。

↑左から順に、
キタテハ、キアゲハ、ヒョウモン。
(いずれも推定)

蝶類では、
ほかにヤマトシジミやセセリチョウも見かけたのですが、
かなりせわしなく動いていたので、
今回は写真に撮ることができませんでした。

↑左上から時計回りに、
キゴシハナアブ、オオハナアブ、ナミハナアブ、
アメリカミズアブ、トホシオサゾウムシ、アオハナムグリ。
(いずれも推定)

自分は虫が得意ではないのですが、
これらの虫たちは花の魅力に引き寄せられる
同士のような感覚で親近感を持って撮影させてもらっています。

今回は、
日本で唯一の渡り蝶「アサギマダラ」が
大好きなフジバカマの花壇周辺をひらひらと飛び回り、
のんびりと蜜を吸う姿が見られてうれしかったです。

大府市のほかにも、
東海市や知多市、豊明市など、
知多半島でフジバカマを植栽する動きが広がりつつあり、
「知多半島アサギマダラネットワーク情報交換会」も開催しているそうです。

アサギマダラを
より身近に感じられるようになる日も遠くないかもしれませんね。

心おきなく花を楽しめる日々が戻りますように。

取材日:2022年10月8日

DATA

二ツ池公園

愛知県大府市横根町名高山88-1
TEL:0562-47-2111(大府市役所)
※入園無料
※園内の大府市自然体験学習施設(二ツ池セレトナ)は午前9時~午後5時開館、月曜定休(月曜が休日の場合は翌日休み)。

交通アクセス

○公共交通機関
JR「共和駅」東口から大府市循環バス「北コース」に乗り、「二ツ池セレトナ」下車すぐ。
◯車
伊勢湾岸自動車道・名古屋南ICから国道23号、同366号経由で南東へ約4.5km。
※無料駐車場有り(7~9月は午前9時~午後9時半、10~6月は午前9時~午後8時半利用可)。

取材担当プロフィール

まころーど
名古屋生まれ、名古屋育ち。
季節の移り変わりを観察するのが大好きなアラフィフ世代。新聞記事制作や、出版社にてガイド本等の制作経験あり。
現在は、旅や町ネタに関する記事を執筆しています。観光や販促のお手伝いも。