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ロンドン 紳士のピッチいずこ

2011年12月01日

 気になって仕方がない。先月末の日曜日、芝生のサッカー場が3面ほど確保できるロンドン市内の公園で、友人らとサッカーを楽しんでいた時だった。

 隣のグラウンドが、やけに騒々しい。いや、殺気立っていると言った方がいい。地元アマチュアチーム同士の試合は、時間の経過とともにヒートアップ。両軍選手の怒声が激しさを増していった。

 矛先は主審。「なぜ、あの程度のタックルが反則なんだ」。1つの判定をめぐり、選手が束になって主審を責め立て、悪態をつく。ベンチの監督も加勢。がなり声を上げて激高する。乱れ飛ぶイエローカード。「サッカーは紳士のスポーツ」など、誰が言ったか-。

 日曜日に行われる「サンデーリーグ」は、いわば「草サッカー」。当日は40歳代後半とおぼしき選手もいた。ただ、日本人が想像しがちな「同好会」とは趣が違う。むき出しの闘志に遊び心はない。真剣勝負こそ、喜びなのかもしれない。

 気の毒なのは主審だ。聞けば、勢い余った選手の抗議に耐え切れず、試合中に怒って帰宅してしまうことも珍しくないという。実際、知人はかつて、見物人として同様の局面に遭遇。選手から主審の代役を依頼されたが断った。「そんな荒れ試合、怖くて誰も引き受けたくないでしょ」。まったく同感だ。

 (小杉敏之)