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ホノルル 90年でたどり着いた

2013年05月27日

 ホノルル市内のバスの中。地元に住む90歳に近い女性と隣り合った。家内が「いいイヤリングをしていますね」と声を掛けたことから会話が始まった。イヤリングは漢字をかたどったもので、字の説明をしてくれた。

 夫は軍人で、日本の基地も含めいろいろな土地に滞在したが、今は1人でハワイに落ち着いている。世界の人が目指す観光地に住めて幸せなことだろうと尋ねると、大満足といった表情を示した。

 女性はわれわれと同じ停留所で降りたので女性が長期滞在するホテルまで一緒に歩いた。女性の部屋は11階だという。西側に部屋があれば水平線に沈む夕日が眺められ、東側にあれば隣のホテルの中庭のフラダンスショーを見下ろせる。毎日が観光客の生活だ。

 女性は足が弱く、歩行器を使ってゆっくり歩くので、生い立ちの話などいろいろ聞くことができた。人一倍の経験をしてきたようで、見たいものを見て、行きたい所は行き尽くしたようだ。この人ならば観光地の喧噪(けんそう)も耳に入らず、ここを安住の地とすることができるのだろう。

 普通の人が観光名所やフラダンスを目当てに転居しても、しまいに飽きてしまうことは想像に難くない。

 家内が自分もハワイに移り住みたいと言い出したが、非現実的で聞こえないふりを通した。 (岡田幹夫)