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ビエンチャン 記者をハメる武器?

2013年01月19日

 ラオスの首都ビエンチャンで11月、アジア欧州会議があり、49カ国の首脳が参加した。開会式には、世界のニュースをにぎわしている顔触れが並んだ。式終了後、会場を歩き回っているうち、迷い込んで入った部屋は偶然にも首脳らの休憩室。誰も入室を止めないので入った。

 中国の温家宝首相ら大物級もいたが、気になったのはパキスタンのアシュラフ首相。6月の就任当初は、ザルダリ大統領が関与したとされる汚職事件をめぐる最高裁との攻防や、自身の汚職疑惑などで前途多難とみられていたが、したたかさを見せている。たびたび記事化していたので興味があり、聞きたいこともあった。

 首相が退室しようとした際、名刺を差し出した。「関心を持って見ています」。首相は満面の笑みを浮かべ、「サンキュー、サンキュー」と言って右手を差し出してきた。こちらも差し出し、強く握り返した。瞬間、薬指に激痛が走った。何かがめり込んだ。何なんだ…? 首相の小指に突起物の付いた指輪があった。痛みにひるんでいると首相は笑みを残し足早に去った。質問の機会を逃した。

 生き馬の目を抜くパキスタン政界を渡り歩いてきただけあり、これも記者の質問をかわす「武器」なのか。数日たっても赤みが取れない薬指を見ながらそう思った。 (寺岡秀樹)