2013年02月16日
雪景色の中、訪れたドイツ西部デュッセルドルフ近郊のネアンデルタール。丘陵地帯にぽっかりと現れる渓谷で160年ほど前に旧人ネアンデルタール人の化石が見つかった。
谷底には今、ガラス張りのネアンデルタール博物館が立つ。館内は「進化論」を象徴するスロープがらせん状に連なり、中央の吹き抜けが気持ちいい。
展示はユニーク。旧人の強い筋力を説明するコーナーでは、大きな岩を頭上に掲げるネアンデルタール人と、筋骨隆々なのに腹の前で抱えるのが精いっぱいの現代人男性のマネキンが並ぶ。
さらに進むと、通路から熱心に吹き抜けをのぞき込むおじさんの姿が。何かと思って近づくと、おじさんと見えたのは背広を着たネアンデルタール人のマネキンだった。「ちょっと疲れたな」てな風情で、フェンスにひじを突く姿がリアルだ。
彼ら旧人は、私たち現生人類と共通の祖先を持ち、一時期は地球上で共存した。最新のゲノム(全遺伝情報)研究では、両者の間で混血があり、特にアジア人は共通の要素が多いと分かっている。
社会科見学の子どもでにぎわう館内を1人見回る当方が、ネアンデルタールおじさんに妙な親近感を抱いたのは、遺伝子が騒いだせいなのか、単に中年の同輩を見つけた安らぎだったのか。 (宮本隆彦)