2013年04月18日
言葉は通じなくても心は通じる。ダウン症の息子が通うロンドン市内の養護学校で、同じ12歳のクラスメートが取り乱したと聞き、胸が熱くなった。
学校で「TJ」と呼ばれる英国人の男子児童は、息子と同じ障害がある。互いに母国語もままならないが通学バスも一緒の2人は大の仲良しだ。言葉の不自由な人のために英国で考案された手話法「マカトン」も駆使し交友を温めてきた。
息子は4月から自宅近くの日本人学校の特別支援学級に移る。教師1人が受け持つ同級の定員は3人。赴任から1年7カ月間、日本の義務教育を受けられずにいたが、ようやく定員に空きが出た。
TJはこの転校を伝え聞き、気が動転した。別れは残される方がつらい。彼の人懐こい顔を思い浮かべると、いたたまれなくなった。
英国で障害児教育を受けるには通常、半年を要する公的審査が必要。渡英直後に申請して結果を待つ一方、日本人学校には早期の受け入れを願ったが、「教員が足りないため定員を増やせない」が毎度の返事だった。
教育の空白が長期化した昨春、救いの手を差し伸べてくれたのが現地の養護学校だ。校長は「すぐここに通いなさい」と手続きの完了を待たず入学を許可。英国の柔軟な対応と、息子と親しくしてくれたTJに感謝している。 (小杉敏之)