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北京 老舗の味守る職人魂

2014年03月10日

 老舗のシューマイ作りの「伝承者」と聞き、職人かたぎのいかつい顔のおじさんを勝手に想像していた。

 北京で275年続く老舗料理店「都一処(ドゥイーチュ)」で、8代目の伝承者として取材に応じてくれたのは、まだ30歳の女性の呉華●さんだった。小柄だが、そのガッツは並ではない。

 河南省の貧しい家で生まれ、高校中退を余儀なくされたが、偶然勤めることになった都一処でしゃにむに働いた。数々の調理コンテストで優勝するほどの腕前となったが、そのことで逆に、店の仲間たちの嫉妬を買ってしまう。半年間、話し相手が1人もいなかった時もあったそうだ。

 「やめようと思った時期もあった」というが、仲間より2時間早く出勤し、さらに調理の技術を磨いた。仲間たちも努力を認めてくれるようになり、統率力も買われて、師匠から「伝承者」に任命された。責任感から、出産後も4カ月で復帰した。

 「今は車が欲しいとか、家が欲しいとかいう人が多いですが、自分にはそういう気持ちは全くない。でも、まじめに生きてこの世に名を残したい」

 転職の多い中国では、「職人」があまり大事にされていないのでは、と感じることがある。それだけに、呉さんの「職人魂」にホッとさせられた。 (佐藤大)

(注)●はにんべんに夾