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キエフ 素顔は過激ではなく

2015年05月01日

 ウクライナ政変から1年の首都キエフの独立広場で、騒乱時に火炎瓶をつくっていたという学生に会うことになった。反政府の闘士を予期したら、やって来たのはあどけなさが残る18歳の女子学生だった。

 デモ参加者は銃撃を含む治安部隊の激しい弾圧に対し、敷石を砕いて投石したり、火炎瓶を投げ付けたりした。流れ弾にあたっていたかもしれない。それでも「恐怖は感じなかった。腐敗した政権を変えたいという気持ちが強かった」とロシア語で淡々と話した。

 驚いたのは親ロシア派武装勢力が広域を支配している東部ルガンスク州出身だったことだ。母親はウクライナ系だが父親はロシア系。以前は自分のアイデンティティーがウクライナかロシアかなど気にもしなかったと話した。広場で死亡した人の多くは、彼女のように過激主義とは無縁な普通の市民だった。

 ロシアでは政変を過激民族派によるクーデターとするプロパガンダが定着。キエフに行くと言うとモスクワの知人は真顔で心配した。一方、女子学生はポツリと語った。「ロシアの介入がなければ、ひどい紛争にはならなかったのに」 (常盤伸)