2017年03月13日
巨大な壁一面に描かれたチャールズ・シュルツさんの人気漫画「ピーナッツ」を眺めながら、真横からの低い目線で貫かれていることに気が付いた。
カリフォルニア州サンタローザで、50年間に1万7897回にわたり連載したというシュルツさんの博物館を訪れた。ガイドの男性がその目線は「大人が入れなくするための枠なのです」と教えてくれた。
ファンの間では知られていることだが、「ピーナッツ」には大人が出てこない。だがその物語の世界は、大人向けだ。
ひいきのフットボールチームが逆転勝ちした試合のことを誇らしげに話す友達に、主人公のチャーリー・ブラウンがぽつりと言う名場面が印象的だ。「相手チームはどう感じたかな」
勝利の喜びに差し挟む敗者への思いやり。漫画の柔らかさとは対照的に、読後の余韻は強烈だ。大人よりも子供の方が鋭いと感じることはよくある。
徹底した低い目線は、子供の世界に引き込んで、現実を考えさせるシュルツさんの仕掛けだったと得心した。敗者や少数派への寛容が試される今の米国の空気が、そう気付かせてくれたのかもしれない。 (北島忠輔)