2019年04月03日
冬休み、先輩と2人でケニアを旅行した。サバンナの野生動物の雄姿と、マサイの人々は忘れられない。アンボセリの村では村人によるダンスの歓迎を受けた。見学料として1人20ドルを払うと、流ちょうな英語を話す青年が村を案内してくれた。
質問も尽き、帰ろうとした時だった。青年に促されて村の裏手へ。視界に広がったのは、村人が地面に布を広げ、ずらりと店を出している光景だった。
青年は私たちを引き離し、それぞれに約20の店を訪問させた。覚悟を決め、ビーズのアクセサリーなど11点を選んだ。
「ドルでいい」。そう言った青年が、木の棒で土の上に書いた数字は「95」。絶句する私に「マサイ文化の保護のため」「キリマンジャロを守って」などの声が飛ぶ。交渉の末、70ドルを払い、振り返ると、先輩は遠くで数十人に囲まれていた。
先輩への提示額は300ドル。動揺した先輩は、赤い布をまとうマサイの戦士に尋ねた。
「クレジットカードは受け付けていますか」
結局、先輩の持ち金はすべてマサイに渡った。この「善意」がマサイの繁栄に生かされることを切に願う。 (沢田千秋)