2019年08月16日
支局の窓を眺めていると、ひらひらと四角い紙片が何十枚も降ってきた。大きさといい、色合いといい、ロシアの最高額紙幣5000ルーブル(約9000円)札のように見えた。
何か事件でも起きたかと思い、階下で確かめると、おもちゃのお札だった。デザインはほぼ実物と同じだが、よく見ると、「失敗作」と書かれている。
愉快犯なのか、人騒がせな話だと思ったが、支局の助手は「ロシアではたまにあるいたずら」と言う。警察が特に捜査するわけでもないらしい。周囲の人たちも平然とした様子で、慌てて確かめる様子もなかった。
人間の目にはあっさり見抜かれていた偽札だが、意外な盲点があった。タス通信は今月、モスクワ市内の銀行の現金自動預払機(ATM)で、5000ルーブルの偽札110枚以上が本物として入金された事件を伝えた。結果的に約56万ルーブル(約100万円)が別の口座に振り込まれたという。
精巧な偽札が使われたのかと思いきや、土産物店で売られているごく一般的なものだという。キャッシュレス化が進む世の中だが、人も機械も、お金の見た目、手触りにはまだまだ注意が必要なようだ。 (栗田晃)