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ワシントン 揺れにも負けずに踊る

2019年11月12日

 ワシントンと隣接州を走る地下鉄は、朝夕のラッシュ時でもぎゅうぎゅう詰めにならないので助かる。座席も日本のように詰めて座る横向きの長いものは少なく、多くが進行方向かその逆向きの2人掛けだ。

 だが、運転はかなり荒い。加速したかと思えば、やたらブレーキを踏む。携帯電話や本を見て油断していると、体をもっていかれ、隣の人にぶつかったり、足を踏んだりで「すいません、すいません」と謝る羽目に。ぶつかられた方も慣れっこらしく、にらまれることはない。

 ある夜、そんなすいていて運転の荒い地下鉄で、大きな音楽が鳴り始めた。車内放送にしては変だなと思って振り返ると、黒人の若い男性2人がラジカセの音楽に合わせ、電車の揺れにも負けずクネクネと踊っていた。駅に着き、彼らが踊り終えると、乗客からまばらに拍手が起きたものの、大きなバケツに投げ銭を投じる人はいなかった。

 それでも彼らは「サンキュー!」と明るく駅のホームに降り、そしてまた3つ後ろの車両に飛び込んでいった。踊りではなく、その強いハートにいくらかあげてもよかったかな、と少しだけ後悔した。 (金杉貴雄)

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