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パリ スシとムシの先進国

2020年03月02日

 「スシの生魚だって、フランスで定着するのに15年ぐらいかかった」。パリで先日、欧州で注目が高まる昆虫食の取材をした時に、昆虫を育てる新興企業の代表や研究者に何度も言われた。「ムシだって、受け入れられるのには時間がかかるよ」

 正直、ムシとスシを一緒くたにされることに少し抵抗はあった。ただ、新食材の定着に時間がかかるのは当然だ。取材先では、味付けしたゴミムシダマシの幼虫やコオロギの仲間を試食。お土産ももらったが、助手はこわごわとかじるだけだった。

 フランスでは、食前にお酒を飲みながら軽食をつまみ、会話を楽しむ「アペロ」という習慣がある。ムシの養殖を手掛ける新興企業「JIMINI」はアペロ用スナックを販売。狙いは明らかで「席上の話題を提供できるし、昆虫食への敷居も下げられる」と創業者のクレモン・セリエさん(30)は言う。

 日本は地域によってイナゴやハチの子、ザザムシも食べてきた昆虫食の“先進国”だ。取材では、しばしば日本人の先行研究も引き合いに出された。スシとムシ。仏人の目には、きっと不思議な国に映っていることだろう。 (竹田佳彦)