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中国・無錫 変わりゆく日中協力

2020年02月28日

 上海の日本総領事館が対中政府開発援助(ODA)の最後の案件として、江蘇省無錫(むしゃく)に建設した学習施設が完成した。小学校の教室より小さく、飾り気も何もない質素な建物だ。

 対中ODAといえば、空港や鉄道、道路などの大型インフラ整備が真っ先に思い浮かぶ。それが中国の改革開放に貢献したのは間違いない。他方で中国政府が積極的に告知せず、多くの中国人が日本の援助自体を知らない現実があった。

 空港に比べれば、無錫の施設の規模ははるかにちっぽけだ。しかし、ここでは住民が生活ごみを堆肥化して農業に再利用する方法が学べる。化学肥料頼りだった中国の農業だが、食の安全意識の高まりとともに、循環型農業への転換が課題になっている。それに協力できるなら、私も日本人としてうれしい。

 完成式典に出席した磯俣(いそまた)秋男総領事は「住民に密着したプロジェクトだ。今後の日中協力は、対等の立場で両国の課題や国際社会が抱える課題の解決に取り組みたい」と話した。

 巨大なハコものを一方的に援助する時代は終わった。この小さな学習施設が、変化を雄弁に物語っていた。 (浅井正智)