2020年04月23日
ミャンマー北部カチン州の州都ミッチーナにある「マナウ公園」。少数民族カチンの祭礼が開かれる重要な場所だ。一角に設置された銅像の前で、来園者が記念撮影を楽しんでいた。
2本のチャンピオンベルトをたくましい肩から下げた姿。国際的な総合格闘技「ONE」で2階級を制覇したカチンのアウン・ラ・ンサン選手の銅像だった。同国での人気は絶大で、試合のテレビ中継に興奮し、心臓発作で死者が出るほど。地元の鉱山作業員ノー・サン・アウンさん(28)は「私たちカチンの誇りだ」と目を細めた。
ミッチーナの別の公園では違う銅像を見掛けた。アウン・サン・スー・チー国家顧問の父親の故アウン・サン将軍。記念撮影する人は見られず、ひっそりしている。2組の男女が芝生の上に開いた傘の陰で、何やらいい雰囲気になっていた。
英国からの独立に尽力した将軍だが、銅像建設には反対運動が起きた。カチンにとって、独立は多数派民族ビルマ人が主導権を握る始まりでもある。
2人の“英雄”の銅像。周りの雰囲気の差は、地元市民が抱く感情の違いを表しているようだった。 (北川成史)