2020年02月07日
「アウン・サン・スー・チー」。タクシー運転手が指さして言う。示す先にはミャンマーのスー・チー国家顧問兼外相の巨大な肖像写真があった。
9月、同国東部ミャワディとタイ西部メソトを結ぶ「第2友好橋」を訪れた。橋は3月に開通式典が催され、出入国管理や通関の建物は完成したものの、両国の運営面での調整が遅れ、未使用になっていた。
肖像写真があったのはミャンマー側の主要施設の前面。式典に合わせて設置されたと思われるが、人影のない敷地で、笑顔の写真は妙に浮いていた。
同国で民主化運動の指導者だったスー・チー氏の功績は大きく、人気は高い。とはいえ、橋は他国との玄関口。肖像を掲げる場所としてはそぐわない。
長い軍政の後、ミャンマーは民政移管し、個人崇拝とは無縁の国家であるはず。入国した外国人が肖像を目にして違和感を覚えてもおかしくない。
10月30日に予定されている橋の通行開始後は撤去されるのだろうか。ロヒンギャ問題など課題の多いミャンマー政府が、国の安定をスー・チー氏のカリスマ性に頼る表れのように感じてならなかった。 (北川成史)