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モスクワ ワーニャ君への祈り

2020年05月18日

 「走り始めたワーニャ君」。ロシアの新聞に牧歌的な見出しを見つけた。笑顔の写真付き。でも読み進めると、すぐに思い出した。1年前にロシアで起きた出来事を。

 氷点下20度まで冷え込んだ2018年の大みそか。チェリャビンスク州の10階建てアパートでガス爆発があった。がれきの下から39人の遺体が収容され、生後11カ月の男児も1日半後に見つかった。それがワーニャ君。

 誰もがテレビにくぎ付けだった。がれきの間から出てきたワーニャ君は靴下と肌着だけ。脚はむき出し。救助隊員はワーニャ君を腕に抱くと救急車へと駆けだした。「助かってほしい」と私も願った。

 記事によれば、ワーニャ君はモスクワの専門医の元に運ばれた。凍傷で切断は免れないとされた脚は、半年を超える治療の末に動くように。もうすぐ保育園に通い始めるという。

 旧ソ連圏で昨年もいろいろあった。紛争や旅客機の墜落。死者数が統計のように無機質に見える時もある。でもワーニャ君の記事を読んで思い出した。生死の境にある誰かのため、ささげる祈りを。 (小柳悠志)

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